
自身の「誤診・遅診を減らしたい」
医師が始めたラビットフォックス開発
きっかけは自身の誤診を防止するため
ラビットフォックスを開発している私は長年、救急病院の総合診療医として勤務してきました。あるとき、数カ前から胸が苦しい、歩くと胸が締め付けられる、歩くと動悸がすることを相談された方がいました。初老の方で、症状と生活歴から、私は冠動脈疾患を疑い、循環器のあるクリニックに診療を依頼しました。
しかし、後日、判明した診断は、私の予想と大きく異なっていました。診断は進行大腸癌と重症貧血でした。そうです。大腸癌による消化管出血で重症貧血を来たし、労作時の胸の苦しさ、胸部絞扼感、動悸が生じていたのです。事実、冠動脈自体には全く異常がなく、輸血による貧血治療のみで症状自体は消失したのでした。
私はその方の症状について、「狭心症に違いない」という思考バイアスから「重症貧血」という病態を想定できませんでした。そして、その背後に隠れていた悪性疾患の可能性は尚更想定していませんでした。しかし、私はこの「想定できなかった」という失敗を失敗では終わらせたくはありませんでした。想定出来なかった理由を突き詰め、同じ誤りをしないためにはどうするかひたすら考えました。
症状・所見に対するチェックリストを作り始めた
上記の事例を通じ、私は年齢、性別、生活歴などの思考バイアスを取り払い、まずはニュートラルに、労作時の胸苦、胸部絞扼感、動悸から、それを来しうる疾患・病態を網羅的に想定することが必要と考えました。しかし、インターネット検索でも網羅的な疾患情報はありません。そして、複数の症状・所見となればなおさら、インターネット検索では対応できません。そこで私は自分自身のために各症状・所見に対する想定すべき疾患のチェックリストを作成し始めます。
ラビットフォックスの原型
自分自身のために作成しはじめた疾患リストは、参照する範囲を拡大し、文献データ・ガイドライン・教科書など、ある疾患の臨床像について記載されたものは出来るだけ多く参照するようになりました。そして、各疾患の臨床像を構造化し、データベースに登録することを始めます。これがラビットフォックスの始まりです。そして、データベースを構築するうちに、自分だけではなく、他の誰でも使えるデータベースにしたいと考え始めます。重視したのは、きちんと根拠(エビデンス情報)を登録し、誰に対しても、その検索結果に関する根拠を明示できることでした。そこで各疾患について、症状・所見に対する対する文献情報も登録しはじめます。
誰もが利用できるシステムを
医療情報の検索では、例えば「しゃっくり」と検索しても「吃逆」と検索しても同じ検索結果がでる必要があります。これに対応したデータベース構築により、初学者から専門家まで、多目的で活用できるオープン医療情報検索リファレンスとして可能性が広がりました。
「誤診・遅診の回避」は医療者だけの努力では難しい
近年、患者さん自身がインターネットなどで自身の症状をついて検索した上で医療機関を受診するケースが多くなり、患者さんから医師への情報提供量が増えることで、これがスムーズな診断確定に寄与する場合が少なくないと実感しています。
私は多忙な医療現場では、医療者の努力のみでは誤診や診断の遅れを回避することは困難と考えています。特に生活イベントや生活環境と深く結びついている疾患は多数あります。ラビットフォックスでは、文献報告を基に、どのようなイベントが疾患の発症に関与したかを詳細に登録し、生活イベントに関連する疾患情報を検索できるようにシステムの改修を進めています。
実証試験版は社会実装前の検証
2026年9月から実証試験版を公開しました。この目的では、ラビットフォックスが社会ニーズにこたえられるものになっているかの検証と懸念事項の洗い出しを目的としています。多くの皆様にご協力いただけますようお願い申し上げます。

※実証試験モデルPCイメージ
実証試験モデル情報
【製品名】
医療情報検索サービス「ラビットフォックス」
【サービス概要】
医療情報検索サービス(複合検索対応型の医療情報検索エンジン)
【基本機能】
・疾患検索:症状所見の入力による関連する疾患病態名、および関連情報の検索
初期収載疾患810
(※収載対象領域は小児・産科を除く)
収載対象疾患は高頻度~低頻度
(国内報告実績の乏しい疾患は収載対象)
・複合検索
症状所見は最大8疾患まで同時検索可能
・補足情報機能
提示根拠に関する情報を提示します
・疾患詳細機能
疾患の詳細情報を提示します
・検索結果の二次元バーコード出力
・検索結果の印刷出力機能
【各疾患のリスク情報に検索機能】
・基礎疾患、既往歴、先行症状、先行疾患による関連疾患の検索
・発症前の行動、生活歴、生活状況、職業(業務内容)、動物接触等、海外渡航歴による関連疾患検索
・発症前の医療行為、手術歴、体内人工物による関連疾患検索
・薬剤使用による関連疾患検索
【その他】
・データベース構築に使用したエビデンス文献の疾患別検索機能
・疾患の収載状況確認機能
【情報更新】
・各疾患随時更新
・収載疾患の定期追加あり(追加収載の予定と時期は、収載状況の確認画面で確認可能)
【ご利用端末】パソコン、タブレット
※スマートフォンは推奨環境ではありませんがご利用いただける場合があります
【実証試験運用】2026年9月1日~10月31日